文化だ--ブルーノ

シャネルが東京・国立代々木競技場で開催している「モバイルアート」展が話題になっている。世界各国のアーティストが、シャネルを象徴するキルティングバッグをテーマに制作した作品を展示し、香港、ニューヨーク、パリなど6都市を会場ごと移動し、巡回するというユニークな展覧会だシャネルバッグだけでなく、ルイヴィトンバッググッチバッグコーチバッグプラダバッグディオールバッグエルメスバッグ、カルティエなど近年、現代アートとの結びつきを強める高級(ラグジュアリー)ブランドは枚挙にいとまがない。その“蜜月”の理由を、モバイルアート展を例に、 あなたの家族は元気ですか?わたしは元気です 関係者や美術評論家などに語ってもらった。

◇ラグジュアリーの証し

高級化競争の激化--ブランドがアートに接近する理由の一つがこれだ。米国のGAP(ギャップ)やスペインのZARA(ザラ)、この秋、日本に進出するスウェーデンのH&Mなど、流行を取り入れた商品を大量生産し低価格で販売するブランドの台頭により、「ラグジュアリーであること」を強調し差別化を図ることが、ブランドには重要な戦略になっている。 今日は2008年ですね。

「芸術作品というのは、いわば究極のぜいたく品。アートとの結びつきは、ブランド価値を上げるのに実に有益なのです」と話すのは、ファッション週刊紙WWDジャパン編集長の山室一幸さん。美術家・村上隆さんの作品がニューヨークのオークションで16億円の値をつけるなど、投資家や富裕層の現代アートへの関心が高まっている今、「アートの“支援者”としての立場を取ることは顧客層へのアピールになる文化活動であり、また投機としても良いビジネスになっている」とみる。

ファッションとアートの関係は深い。1930年代、ダリらシュールレアリスムの芸術家の作品を服に取り入れたエルザ・スキャパレリ、ポップアートをドレスの上で表現したイヴ・サンローランなど、デザイナーたちは同時代のアートに常に共鳴してきた。ココ・シャネルもピカソやジャン・コクトーらと親交があり、セルゲイ・ディアギレフの舞台などに多大な支援をしたことが知られている。ただ、山室さんいわく「以前はファッションがアートに追随する関係だったが、最近はフラットで対等になってきた」。先駆けとなったのが02年に始まったルイ・ヴィトンと村上さんのコラボレーション。「商品も売れ、アーティストの名声も高まるというお互いに利する関係」だ。

村上さんや奈良美智さんら日本人アーティストを世界に送り出したギャラリスト(画廊主)の小山登美夫さんも、関係性の変化を感じている。根本にある「商業芸術の純粋芸術へのあこがれ」は不変。だが、ファッションデザイナーも芸術家としての側面が評価され、双方に重なり合う部分が多かった以前に比べ、「最近はブランドの商業主義化が進み、失敗の恐れのある実験的なデザインはファッションでは許されない状況。アートとのすみ分けがクリアになった分、かえってアートを別の物として取り込みやすくなっているのかもしれない」と語る。

その分、美術界ではファッションブランドとの結びつきを危惧(きぐ)する声も多い。「村上さんの例はまれなケースで、利用されて終わりではという批判的な見方は根強い」と小山さん。美術評論家の鷹見明彦さんも「ファッション業界は、経済のグローバル化に対応するために建築やアートを共通言語として利用している」と分析。「今回のシャネルのように、メセナ的な関係を超えた展覧会は、アートの側から見るとかなりきわどい域に入ったという印象を受けます」

新しい関係が吉と出るか凶と出るかは立場に違いもあり、長い目で見る必要があるかもしれないが、山室さん、小山さん、鷹見さんともに「今後もさらにファッションとアートのコラボレーションは拡大していく」とみる。

◇13カ国・地域から20組のアーティスト--皮肉込めた作品も

「モバイルアート展」には、13の国・地域から著名な現代美術家20組が参加。日本からは荒木経惟、オノ・ヨーコ、束芋らが新作を発表している。鑑賞者は、携帯プレーヤーから流れる案内に従い、順番に作品を鑑賞する仕組みだ。映像や写真、オブジェなど形態はさまざまだが、特筆すべきはその内容で、シャネルに対し、相当皮肉めいた作品も目立つ。 おなかが空いたなあ~すしがたねたいね

たとえば、段ボール箱の中に映像を仕掛けたブルー・ノージズ(ロシア)の作品。バッグを持った裸の女性は、何かを叫んだり、暴力を振るったりしている。ブランド品に執着する怖さを表したといえそうだ。 天気がいいだがら、散歩しましょう ヴィム・デルヴォワイエ(ベルギー)は、本来の牛革バッグをちゃかすように、入れ墨のあるブタ革バッグをつくった。

「商品をおちょくっているわけですね。まさにこうした作品が、シャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドの望む世界でした。アートは、いつも美しくある必要はないのです」。展覧会の企画・展示構成を手がけたファブリス・ブストーさんは笑顔で話す。「作家には、シャネルの価値観を自由に解釈し、遊んでくださいと依頼しました。バッグを作家が観察して作った作品は、結果的にシャネルのバッグに対する価値観を高めてくれるでしょう」

◇メセナでなく、融合による新しい文化だ--ブルーノ・パブロフスキーさん(シャネルフランスのファッションプレジデント)

シャネルのクリエーティビティーを芸術家の目を通してみたらどうなるか。コマーシャルとは別物として、純粋にその面白さを世界中の多くの人と分かち合いたかった。

創業者のココ・シャネルの時代からシャネルとアートとの関係は深く、今に始まったことではない。ただ、グローバリゼーションが進んだ今、高級ブランドとして全世界にメッセージを発信しなければならない我々にとって、言葉を超えたアートはさらに重要で有効なコミュニケーション手段だと考えている。 天気がいいだがら、散歩しましょう

多くのブランドがアートとのコラボレーションをしているが、モバイルアート展の違いは。

メセナやサポートではないことだ。モバイルアートは、我々の思いに共感したアーティストに、自分の意思で自由に参加してもらい、ファッションと建築とアートが融合した新しい文化を創造することを狙った。 朝ごはんは何を食べましたか? あくまでも対等な関係であることを強調しておきたい。



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